婦人ジャーナル
戦争の思い出を話そう 人類はやがて滅びる?
山主 敏子
pp.57
発行日 1970年10月1日
Published Date 1970/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204001
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戦争の思い出を話そう
このごろの学校教科書では太平洋戦争や原爆についての記述がひどく簡単になってきているという。原爆なども,1行か2行で片づけているものもあり,外国の教科書でさえ数ページをついやしているのにくらべ,おそろしく消極的である。それは,文部省の検定制度が,家永教科書のばあいにもみられるように,思想審査の色彩が濃厚であるため,筆者も出版社も必要以上に神経をとがらせ,警戒してしまうからであろう。
家永三郎教授のいわゆる教科書裁判は,文部省側の敗訴という判決が下されたが,文部省は上訴の方針だから,まだ問題は長びくだろう。家永教授の新日本史というのはそんなに左翼っぽい本なのか,どんな点で不合格になったのかと見ると,これはしごく他愛もない事がらである。まず原始社会では縄文式土器につけられた人面,古代社会では写経に描かれた庶民の働く姿など,時代ごとにつけたとびらの写真の題が,"歴史をささえる人々"となっていたのがいけないという。つまり庶民だけが歴史をささえているというのでは一方的見解というわけ。また"古事記や日本書紀は皇室が日本を統治するいわれを正当化するために構想された物語だ"という文がはぶかれるといったぐあいである
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