特集 社会医学(第3回社会医学研究会講演)
一般演題
都市低所得階層の健康問題
渡辺 弘
1
,
細川 汀
1
1大阪府立衛生研究所
pp.617-619
発行日 1962年11月15日
Published Date 1962/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202589
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戦前に比し企業規模による賃金較差は増加し,日雇・単純労働者・臨時工など低所得労働者の生活はますます悪化している1)。特に大都市におけるこの階層は家屋の老朽化・環境衛生の劣悪・社会病理的問題の増加などと相伴なって停滞または沈澱を深めている2)。われわれは種々の企業における労働者の健康管理をすすめて来たが,零細企業労働者および年少工や臨時工の血液所見が大企業労働者に比して低値を示すことを認めた。このことから,労働者の健康障害を問題にするばあい生活水準がどれほど大きい因子であるかを検討する必要を感じ,若干の調査を行なった。
低所得階層の健康に関する調査は従来から多く行なわれているが,その大部分は生活保護を中心とする救貧ないし社会福祉対策を目的としており,被保護者ないしは日雇労働者スラム街住民などを対象としている。しかしかれらも労働者階層の一つを形成しており,また他の労働者階層を経過して没落するばあいが多い。従ってこれらの階層は連続したものとして捕捉しないと,対策もバラバラに切り離なされる結果になりかねない。このことは行政面において労働・民生・保健が分離されていることから一そう注意を要する点であろう。
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