連載 講座 母子保健・5
小児の発育と母子保健
矢田 純一
1
1東京大学医学部母子保健学教室
pp.52-55
発行日 1970年8月1日
Published Date 1970/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203973
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このシリーズではいままでに母子保健の概念に始まって,母子保健活動における助産婦の役割,先天異常,妊娠出産をめぐる問題までが論述されてきた。ここでは小児の出生後の問題,特に小児の発育を中心に母子保健を考えてみたい。枚数の制限もあり実用的な事項について細かく述べることはとうてい不可能であるからごく概念的な話題を提供してその責を果たしたい。経験の浅い著者の偏った考えであるかも知れないが読者諸氏が母子保健を考えるうえで何か得るところがあれば著者の望外の喜びである。健康とは何かWHOによる健康の定義は「身体的,精神的および社会的に完全に良好な状態であり,単に疾病または虚弱が存在しないということだけではない」とされている。小児の健康を考える場合には現在の時点において健康であるというばかりでなく,将来大人になってからも健康であるための条件が発育過程で準備されねばならない。また小児だけを対象にして考えるのでなく母子を一体としたユニットとして健康を考えていくのでなければならない。
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