特集 低所得階層と結核
結核対策—特に低所得者階層における
高島 常二
1
1厚生省結核予防課
pp.226-232
発行日 1961年4月15日
Published Date 1961/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202397
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I.結核予防行政の展望
昭和26年大改正を加えられた結核予防法は健康診断・予防接種を中心にすえ,保健婦による患者並びに患者指導を強化し,人工気胸・SM・PAS・INAH等適正医療の普及を旗じるしとした結核医療保障と結核病床の建増とを促進したまさに画期的なものであつた。
昭和28年国は地方庁・保健所を動員し結核実態調査を行い,集団生活を営んでいない一般住民の間にもあまねく結核患者が潜在し,感染性肺結核の患者ですら自分が結核である事を知つている者は41.3%にすぎない事が明らかになり,その結果30年10月住民検診の実施を市町村長に義務づける事になつた。所が,住民検診で発見した患者に対して万全の処置をとる手段が制度的に薄かつたこと,検診そのものが医療機関との連繋なしに保健所の手で一方的に行なわれたこと,住民側に無自覚性結核症についての理解が少なかつたこと,全国民健康診断は規定のみで検診能力がたりなかつたこと等から一般住民や中小企業の従事者の検診率の上昇は鈍いものであつたが,一方結核病床は32年には目標の26万床に達した。
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