助産婦必読書
この目で見たアメリカの看護—杉森 みど里 著
中西 睦子
1
1東邦大学付属高等看護学院
pp.44
発行日 1968年12月1日
Published Date 1968/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203672
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まず「読ませる本」としておすすめしたい.ICN特恵交換看護婦としての著者の目を通して,アメリカの2つの病院の看護の実態が,多角的なとらえ方で紹介されているのであるが,その歯に衣きせぬ直截な論調にひきつけられるであろう.
思うに一時期ブームにのった,何々ある記のたぐいの見聞記の魅力が見知らぬ土地の美麗な絵ハガキを文字として並べたてるのでなく,何をどのように見,感じてきたかという著者自身のあきらかな人間像に負うているとすれば,この書の魅力もまた,あまりに素直なアメリカ崇拝精神のゆえに自縄自縛の憂き目を見ぬとも限らない日本看護界に静かに警鐘を鳴らしているひとりの聡明な看護婦にあるとはいえまいか.著者は,一看護婦としての悩みの解決を,看護の先進国たるアメリカに決して全面的に求めてはいない.その題名の示すように,まさに「この目で見た」であって,この目とは長年の経験に熟した,おそらくはきらきらと輝く熱っぽい批評眼である.なに1つ無批判な受けとめ方をしていないことは一読すれば明らかであり,また一見あるがままの記述のようでありながら,体系的ともいうべき凝視がそこにある.なかでも第3章,第4章のチームナーシングの実態については,詳細な資料提供もさることながら,その緻密な考察は出色であリ,誰しもじっくりと考えるべき問題を提起している.
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