書評
V. H. Walker 著 杉森 みど里 訳—看護業務の再評価
中西 睦子
1
1神奈川県立衛生短大
pp.73
発行日 1972年2月10日
Published Date 1972/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205038
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まず原題に目をとめてみると,"Nursing and Ritualistic Practice"といささか意表をついた文字がとびこんでくる。直訳すれば,看護と儀式化された活動となり,たしかに,看護業務において儀式化された行為の考察をすることが本書を説きおこす発端となっている。ところで,私がここで意表をつくと述べたのは,儀式の語に関する一般的な概念に依存するなら,看護活動は,まさにその対極にあると思われたからである。それゆえ,本書の発想は,一見きわめてユニークかつ飛躍的とさえ思われるのだが,それはいかにも観念的に受けとめた印象でしかないことが,序章における次のようなコメントで明らかにされる。
—たとえば子供の病気にただおろおろしている母親を訪問した保健婦が,落ちついて体温測定をすることでその母親がとても安心し,希望をもつことがある。この印象的な形骸化した行為は,それ自体別に何の役にもたたない。日常生活にはこのような形骸化しているといわれる多くの行為が効を奏している。—そして,—作業上,看護管理上に機能障害をきたす行為—でありながら—看護職員にとって何か特別な意味をもっていそうに思われる—いくつかの看護業務がとりあげられ,一連の調査研究を行なった結果が本書において総括されている。
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