ぱんせ
―『市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗』(李啓充 著)―「日本はアメリカをぜったいに真似てはいけない」
勝原 裕美子
1
1兵庫県立大学看護学部
pp.176-177
発行日 2005年2月1日
Published Date 2005/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100104
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- 文献概要
この原稿を執筆しているのは2004年12月初旬.混合診療を解禁するか否かをめぐる議論が連日のように新聞紙上をにぎわしている.本号が出るころには,その問題も決着をみていることであろうが,今後も同様の議論はさまざまな形で浮上するだろう.「同様の議論」とは? 言うまでもなく,医療を市場に委ねるかどうかの議論である.
肌で感じたアメリカの医療
話は遡って,1998年7月.当時,私は在外研究のためサンフランシスコで4か月を過ごすことになっていた.アメリカの医療が高額であることを聞いていた私は,日本でたくさんの医療保険をかけて出かけていったのだが,歯の治療までは頭が回っていなかった.ある日,奥歯にかぶせていた金属が取れてしまい,あわてて電話帳を繰ることになった.歯医者を捜したのだが,車もないし,地理が定かでない私には行けそうもないところばかりだ.そのうえ,アメリカで知り合った友人は,たとえ歯医者が見つかったとしても,そして,たとえ取れた金属をかぶせるだけであっても3万円は下らないなどと,平気で私を脅かした.そこで目についたのが,「USCF(カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校)の歯学部学生による歯の治療」という広告だった.どんな治療も50ドルと書いてある.何よりも下宿から徒歩で行けるのが魅力だったので,すぐにそこに連絡をし,予約をとって出かけた.
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