母もわたしも助産婦さん
今は母のペースで
林 範子
pp.36
発行日 1967年8月1日
Published Date 1967/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203440
- 有料閲覧
- 文献概要
「先生いらっしゃいますか,ちょっと診察していただきたいのですが」とか「ちょっと相談があるのですが」という場合の先生とは,ほとんど母のことをいっているのです.つい「私は駄目でしょうか」と聞いてしまう.定期的な診察くらいは私でも納得がいくらしいが,それでも母の診察の時は,私の倍くらいの時間を要する.一体何をそんなに話しているのか不思議な気がする.私は診察して,その後その月々の保健指導を済ませればもう終りであるが,母は上手にその人の家の内部事情まで聞き出してしまい,心配ごとやら悩みごとまで相談している.姑と仲が悪く,思うように休養がとれない,栄養がとれないというようなことがあれば,さっさと出向いて話し合ってくる.少しでも妊婦が安心して子供を産めるように努力してあげる.それは子供が大きくなるまでも続くのであるから,少々お節介も入っているような感もしないでもない.
分娩の後などは,3晩は側に寝て,子供の世話から,産婦の世話まで夢中でする.その間によもやまの世間話をして楽しんでいる.時には血圧が上がって,家の者たちに心配をかけることもあるが,しかし産婦さんの側から見ると,母親に甘えているような気がするそうであるから,これからもおおいに頑張ってもらおうと思っています.
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.