特別レポート
細菌学的にみた新生児室管理の検討
坂元 正一
1
,
井上 毅
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.27-32
発行日 1966年9月1日
Published Date 1966/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203259
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
新生児期は子宮という密室内に保護された受け身の環境から,外気に曝らされた自立環境への移行期間で,呼吸器系,循環器系,消化器系はもちろん,全身が新しい環境に完全に適応するべく,大きな変動を起こしており,このため非常に不安定な時期ということができる.もし正常範囲を越える環境に出会うと適応許容範囲がきわめてせまいために,すぐに死と直面する.したがって新生児管理の重要性はその環境管理にあるといっても過言ではあるまい.
わが国の新生児管理の現状は1965年の統計をみると早期新生児死亡数(出生時より生後7日目までの死亡)は欧米に近い数字を示しており,一見管理が行きとどいているようにみえるが(第1図),後期死産数(妊娠28週以後の胎児死亡)は欧米の値の約2倍を示していることに気づく(第2図).これはわが国では出生後短期間に死亡したもの,すなわち早期新生児死亡にいれるべきものを死産として届出ることが多いからで,実際は死産はもっと少なく早期新生児死亡がもっと多いはずで,新生児管理にはまだまだ努力を払わねばならない現状である.このことを念頭において,生後1か月未満の新生児死因を見ると(第3図),50%以上を占める未熟性につづいて呼吸器系および胃腸管系の感染症が16.3%と第2位を占めており,奇形,分娩損傷などは非常に少ないことを考えると,新生児管理面での感染予防の意義は極めて大であることがわかる.
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.