現代のカルテ
「氷点」などから
野口 肇
pp.48
発行日 1966年7月1日
Published Date 1966/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203232
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朝日新聞が募集した懸賞小説に,北海道のシロウト主婦作者の三浦綾子さんが当選し,紙上に連載されました.ついで単行本として出版されベスト・セラーになり,さらに連続テレビ・ドラマ化,映画にもなってひろい愛好者に絶讃を博しています.野球の王選手ではないが,ただいま三冠王というわけ.なかなかの才女です.
筋書きはすでにごぞんじのとおり,ある医師の妻がわかい助手といちゃついているうちに誘拐事件で幼児が死に,それを覚った夫は犯人の娘を養女にする.登場人物すべてが不幸になやむ一種の宿命的な復讐ばなしです.それら人物がどれも生きいきとかかれ,さすが評判をえたのももっともです.作家の三浦さんはさきに「わたしはなぜ"氷点"をかいたか」と題する手記を某週刊誌によせております.すぐれて利口な婦人ではあります.しかもありきたりのヨロメキ小説とはちがい,彫りのふかさは抜群です.
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