インターホン
看護者の生活
宮本 晴子
1
1国立浜松病院産婦人科
pp.45
発行日 1965年11月1日
Published Date 1965/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203079
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しっとりと湿ったさわやかな朝の空気を胸いっぱいに吸いながら宿舎にいそぐ時,一つの分娩を無事に終えた私の心は,職業人としての誇りでいっぱいです.助産婦であり,看護婦である私たちが,一般の社会人たちにくらべて,職業人らしくなり過ぎ,社会性に乏しいのは,この誇りのためでしょうか.われわれの生活の大半は病院と宿舎の間の往復であり,若い人たちは夜勤につぐ夜勤で真夏の美しい太陽も浴びずに終日寝て暮します.その宿舎には個人の生活がなく,家庭らしい温い雰囲気もないことが,だんだんと人格の差を作っていくのではないでしょうか.一部では,宿舎生活の欠点を取り上げ,病院外でのアパート生活の必要性をといている施設もあるとききます.今一度人員不足の対策にとり組む前に,われわれの生活のゆがみを静かに振り返えったなら,若い人たちに魅力のある職場となるのではないかと,このさわやかな美しい朝の空気を吸いながら何とか豊かな心の持主になりたいと思い,自分の生活をあれこれと振返っています.
先日東京で1人の親友を癌で失いました.もしこの親友が死ななかったなら,おそらく将来の日本の看護の前進のために奉したであろうと思われる知識と経験と豊かな心の持主でしたが,手術をした時にはすでに腹水がたまっていたとききます.今年の初めに少々健康を害した私は,常にいらいらと神経がたかぶり,おこりっぽく精神の安定を欠いておりました.
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