メディカル・ボックス
ダウン症候群—その特徴と原因
栗田 威彦
1
1国立国府台病院小児科
pp.53-56
発行日 1965年9月1日
Published Date 1965/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203048
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名称と頻度
ダウン症候群は従来,モーコ症またはモーコ人様痴呆と呼ばれており,染色体異常を伴った人間の突然変株である.知能障害があるたあ一般精神薄弱と混同されていたが,1866年英人のラングドン・ダウン(Langdon Down)が一般の精神薄弱から分離独立させたもので,いわゆる精神薄弱ではない.どの患者も皆同じようにモーコ人種のような顔付きをしているのでこのような名称がつけられたが,私は次の理由でモーコ症と呼ぶのは不当であり,ダウン症候群というのがよいと考える.すなわち1)この病気はモーコ民族ばかりにあるわけではなく,白人にも黒人にも同じように見られること,2)まだその本態も原因も明かではなく,しかも最初にこの特有な病気を独立させた学者の栄誉のため,ならびに,3)このようないわば退化した人間像にモーコ民族の名をつけることは,あたかもモーコ民族が他の人種より劣等なるかの印象を与える恐れがあると思われるからである.
この病気の頻度は10万人中25〜50人の割にみられ,近年はますます増加の傾向にある.また出生1,000人に対し1.5人の割で生まれるとされ,乳幼児期に死亡するものが多いので一般人中の頻度は少なくなる.なおあらゆる原因の精薄の中ではだいたい10%程度にみられる.したがって日本全国では数万人の患者がいると推定される.
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