綜説
ダウン症候群を主とする先天異常症候群
栗田 威彦
1
1国立国府台病院小児科
pp.135-143
発行日 1964年3月15日
Published Date 1964/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202802
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まえおき
われわれ小児科医は出生前の原因によって起る疾患をみることが多い。殊に戦後の抗生物質の発達,衛生知識の向上,予防法の普及等により後天性疾患は激減したが,それに反比例してこの先天性疾患は増加すると共に注目を浴びるに至った。
一口に先天性疾患といってもその種類は多く,これを奇形のような形態的疾患と代謝障害症,精神薄弱のような機能的疾患とに大別できる。また形態的異常でも一見して明かなものから,心奇形のように体内的で外見上では分りにくいもの,組織的に初めて分るもの更に生直後に分るものから生直後には正常でも乳児期,幼児期と成長するにつれて現われるもの等その種類は様々である。しかしその何れもが先天性即ち胎生期(或いは受精前)にその原因があることには変りがない。また形態的異常の中でもそれが1臓器または1組織乃至系統に止まらず,2カ所以上の部位が同時に冒されているものも少くなく,更に形態的異常と機能的異常とが合併しているものもある。ここに述べるダウン症候群はその代表的のもので,このように数コの形態的または機能的異常が合併したものは多くはその最初の記載者の名称を冠して症候群と呼ばれ,その種類も少くない。一般に小児科領域で見られ,注目され出した主なものを列挙すれば第1表の通りである。しかしその頻度はそれ程高くはない。
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