連載 育児相談・3
育児相談ということ(Ⅲ)
高口 保明
1
1神奈川県立母子保健センター
pp.49-51
発行日 1965年3月1日
Published Date 1965/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202937
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5.育児相談の方法論(つづき)
f)問題解決は両親と共同で
保健指導の眼目は相手の人格を重んじ,その人の考えを尊重して,行動にうつすまで援助することである,と成書は記している.ところがややもするとわれわれはそうはしない.単に「それは間違いです.こうしなさい」と指示することが多いものだ.しかし,そのようなやり方では問題解決は両親と共同で行なわれるのでなく,助産婦,保健婦あるいは医師が問題を解決することになってしまう.ときどき「××先生のおっしゃるとおりに育てていますから,すっかり安心です」と言う母親に出会うが,これでは赤ちゃんを育てているのはお母さんなのか,先生なのか疑いたくなる.育児の主体性はどこにあるのかということだ.
現在の大衆社会においては,人びとはマスコミに踊らされて,自己の主体性をなくしてゆく.このような主体性消失時代において,せめて子供を育てるという仕事くらいは,親たちが主体性をもって行動してほしい,と願うのは私だけではないだろう.
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