連載 育児相談・6
食事に関する育児相談(Ⅲ)
高口 保明
1
1神奈川県立栄養短期大学
pp.36-40
発行日 1965年6月1日
Published Date 1965/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202987
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(11)断乳の問題
断乳(母乳をはなすこと)は,今日でもやはり母親たちを一苦労させることが多い.しかし,生後8,9か月頃だと,赤ちゃんは割と母乳に執着を示さないで,簡単に断乳できるものである.まずその頃になったら,母乳が十分出ても,ミルクか牛乳をコップで与えるのである.たいてい数回の練習で飲むものだが,食事時にかなり飲めるようになったら,今度は母乳の前に与えてみる.飲めば,その分だけ母乳はへり,そのうちにいつともなく,ミルクから牛乳だけで母乳をのまない授乳が現われる.間もなく全部の母乳が牛乳かミルクにかわってしまう.混合栄養の赤ちゃんがすぐ人工栄養児にかわるのを見ると,このやり方がスムースに行くことは誰も疑わないだろう.
ところが母親というものは,母乳があると,何時までものませたい心理をもつらしい.その上便利なものだから,つい何時までも飲ませつづける.そしてお誕生も近くなって,そろそろ断乳しようとすると,断乳はそう簡単でなく,絆創膏や苦い薬を乳首にはったりしてもうまく行かない.結局,泣いても敗けないでやめることでようやく成功するのだが,その場合,前提条件をうまく整えることが大切である.上手な前提条件というのは他ではない.母乳を止めさせようと一途に考えないで,赤ちゃんのお腹を食物で十分満足させて,ときどき母乳を忘れるように仕向けることだ.忘れる機会が多くなれば,結局,断乳ということになるわけである.具体的に説明しよう.
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