連載 育児相談・2
育児相談ということ(Ⅱ)
高口 保明
1
1神奈川県立母子保健センター
pp.53-56
発行日 1965年2月1日
Published Date 1965/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202924
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4.育児に哲学を(つづき)
e)病気を恐れない
ルッソーはエミールの中で,「医術はわれわれの病気をいやすよりも,むしろわれわれに病気に対する恐怖を印象させる.死を遠ざけるよりも,むしろ死を予感させる.生命を延ばすかわりにこれを衰えさす」と書いているが,このことは現代社会においても真実である.雑誌・ラジオ・テレビ・新聞は,毎日新しい医学上の発見について人びとに宣伝し,病気に対する恐怖心をさらにかき立てている.
しかし,事実は,ルッソーの時代に比べればもちろんのこと,ちかちか20〜30年間を比べてみても,現代社会では医学の進歩のおかげで,重い病気は減り,死の危険は明かに少なくなっている.たとえばわが国の乳児死亡率は,1935年の106.7‰が,1962年は26.3‰で,4分の1以下に下がっている.このことから,われわれは祖父母や父母の時代に比べて,数倍は病気を恐れなくてよいことがわかるのだ.
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