連載 私は赤ちゃん・9
お兄ちやん
田村 昭子
1
1元:東京警察病院附属高等看護学院
pp.47
発行日 1965年2月1日
Published Date 1965/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202921
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ボクとお兄ちゃんとは大のなかよしである.まだ心ゆくまで話しあったことこそないが,子供同士相通ずるものがある.とくにオイタのときはそうである.
お兄ちゃんがミシンのほうからチラリと見る.すぐにピンと来る.キシャゴッコをしようというのである.踏台に腰をかけて「キシャゴッコ,キシャゴッコ,誰が誰が運転手,ボクがボクが運転手」と歌い出す.ボクの大きなオシメカバンをひっぱり出し,首からかけ「ヨシタカちゃん,お客さん,おおりはお早く下さい.イイダバシー,イイダバシー」と今日もまた始まった.しかしボクは,そんな単純なことではあき足らない.ミシンの下の穴から手をつっ込んで,中のキカイを点検しはじめる.お兄ちゃんもすぐ協力する.押入れ,これがまたボクたちにとってすばらしい遊び場である.ママがきれいにしまってあるものを,つぎつぎにひっぱり出し,その中に入る.暗いせまい中で,キャーキャー言いながらお兄ちゃんと抱き合う.つんである箱がユラユラゆれる.押入れのビックリハウスでもスリル満点である.
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