わたしの分娩
早く済んだが,苦しかつたお産
野田 美和子
1
1東京都中野北保健所
pp.42-43
発行日 1964年11月1日
Published Date 1964/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202867
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陣痛が始ったのは11月19日午前零時半頃であった.今までに多くの講義で耳にした言葉ではあったが,一瞬身の引締まる思いがした.「さあ分娩が始まる.初産だから生まれるのは昼すぎになるだろうが,この体験を冷静に観察するのだ」そう自分に言いきかせた.
働いていた私は,妊娠中も中央線のラッシュを通り抜け,家庭訪問もしていた.つわりは大して強くはなかったが,最後まで食欲がなかったので,産休に入る頃も,周囲から小さすぎると心配されたほどであった.出産準備をすっかり整えた後にも私には1つの不安があった.胎児が骨盤位で,しかも羊水が少ないらしいということ.主治医を診療所から大きな病院に変えたのも万一の場合を考えたからである.
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