報告
一保健所助産婦の業務経験
古手 静子
1
1川崎市中央保健所
pp.53-56
発行日 1964年11月1日
Published Date 1964/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202872
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私は昭和26年6月1日保健所助産婦としてこの川崎市中央保健所に勤務した.建物は市内の目抜通りにあったデパートを改装したもので,保健所として使用するにはまったく不便で,その上戦災をうけた焼ビルなので,仕事の最中に突然砂けむりをあげて壁がくずれおちることもあり,それこそ「上をむいて歩こう」という環境でした.このような中で,私の保健所助産婦生活の第一歩がはじまりました.当時一般市民は保健所が何をする所かも知らない人が大半で,私のところに来る妊産婦にしても,母子手帳は配給米の増配のためにあるように思っているため,手帳が何のために交付されるのかを説明するにはたいへん苦労をしたものでした.保健所にはじめて置かれた助産婦として,私はあらゆる時に保健婦と助産婦の和が大切であることを痛感しておりましたが,さいわい保健婦長も,この点について配慮して下さり,業務指針もない中で,とにかく仕事が始まりました.数日後,地区の助産婦会長もまた会員一同を集めて紹介してくれました.入所して間もない日,保健婦が40歳位の婦人をつれてきました.私は,年齢と貧血が強く腹部の大きいことから子宮筋腫ではないかと思い,早速病院に紹介したところ,あとで病院から子宮筋腫だったと通知をうけ,ほっとすると同時に,助産婦としての使命感をもったことが,今でも思い出されます.これから,私がたずさわってきた仕事とその進展を書きたいと思います.
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