インターホン
母子健康センターに勤務して
佐々木 寿子
1
1岩手県千厩町立母子健康センター
pp.45
発行日 1964年11月1日
Published Date 1964/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202868
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私が産婆養成所に学んでいるころ,夏休み帰省の車中で,小学校時代の恩師にお会いしました.先生はそのとき,「今の人は卒業すると都会のほうにばかり出て行くが,あなたは必ず家に帰って開業なさい.ご両親もよろこばれるでしょう」と言われました.事実,5,6キロも行かなければ助産婦がいないような片いなかのこと,親の希望によって,まだまだ去りたくない先生のもとを思い切って,病院生活からいなかに一人立ちに開業する不安と希望をもって開業してから,33年目となりました.
その当時はまったく原始的なお産のやり方で,食生活やすべてに迷信が多く,妊娠中の診察はおろか,異常産になったときまで助産婦を頼むといった傾向でした.現代ではとうてい見られない異常産がたびたびで,そのたびごとに妊娠中の指導の必要を痛感し,1日も早くみんなが安心したお産ができるように,と願いながら,石の上にも3年とか申しますが,誠意をモットーとして努力してまいりました.次第に妊娠中の受診から出産介助等と妊娠に対する知識も深まり,無介助分娩も少なくなり,産家から産家へと家にも帰らず渡り歩くときもありました.
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