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弱視の治療—なるべくはやくはじめるように
加藤 格
1
1関東逓信病院眼科
pp.33
発行日 1963年4月1日
Published Date 1963/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202519
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弱視の治療は近頃まであまりよい方法がありませんでした.今までにできたのはたとえば,片眼の視力が弱い時によい方の眼にぴったりと眼帯をかけてしまって,弱い方の眼だけを使わせるようにするといった程度のことだけで,患者さんやその両親そして眼科医も半ばあきらめていたというのが実情でした.しかしこの数年,わが国でも弱視治療の研究がだんだんと進み大学の附属病院などで系統だった弱視の治療を手がけはじめ実際にかなりよい成績をあげられるようになりました.明年の日本眼科学会の総会では,この弱視の治療が宿題報告のテーマにとりあげられ東大・慶大・京都府立医大からそれぞれのデーターが報告され,いちいち議論されることになっています.
一体弱視というのは何でしょうか.学問的にいえば,"眼に器質的な変化がなく,またあったとしてもそれでは説明のできない視力の低下"ということです.判りやすくいえば,眼には何の異常もないのに眼鏡をかけても何をしても視力が出ないことです.小さい病変があってもそれ以上に視力の悪い眼も弱視に含まれます.この弱視の子供は案外多いものです.そしてその大部分は小さい頃からあるものでただみつけるのが遅く,学校に行くようになってはじめて気が付くということが多いようです.無関心といえばそれまでですがこれが治療に一番困ります.
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