一般教養講座
新しい時代の話し方・2—その正しい理解と実行をねがって
上甲 幹一
1
1名古屋大学
pp.42-44
発行日 1963年2月1日
Published Date 1963/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202492
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7.話すことの最高の目的は人間同士が協力しあって,よりよい社会を作りあげることである.
オシャベリは話し方の一部にすぎず,話し方の主流はそんなものではない--ということは前号で述べたとおりです.では,主流をなす話し方とはどういう話し方かというと,これもすでに述べたとおり「ことがらや感想や意見を相手にハッキリ伝えるための話し方」です.
では,なぜそうした話し方が話すことの主流的なものなのか--と,開き直るまでもなく,もともと私たち人間は自分ひとりで生存し生活することはできません.どうしても社会的な形態を作って,その社会の一員として生活せざるを得ません.その社会の形態は,もちろん,便利で気持のよいものであってほしく,人間はいつの時代であっても,「より住みよい社会を」と願いつづけて来ました.人類の文化というものは,こうした願いの集積したものにほかなりません.この「より一層住みよい社会」を作るには,その社会に属するひとりひとりが,まずよい個人,すぐれた個人になることが必要ですが,それとともに,そうしたよい個人,すぐれた個人がお互に協力することが必要です.いかによい個人,すぐれた個人がいたとしても,協力を欠いては,よりよい社会を建設することは絶対にできません.
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