一般教養講座
新しい時代の話し方・1
上甲 幹一
1
1名古屋大学
pp.34-36
発行日 1963年1月1日
Published Date 1963/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202471
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.話し方への評判あれこれ
「戦後強くなったのは靴下と何とか」というヒヤカシ文句がありますが,戦後著しく目立って盛になったものの一つに話し方があります.話し方にもいろいろな形がありますが,そのうちでもとくに「話しあい」という形式が花形になりました.何しろ民主主義の世の中になったのだから,上からの一方的な押しつけや指令などは一切すべきではなく,何から何まですべて「話しあい」でゆくべきだという風潮が生じたためです.それは,原則的には結構なことであり,終戦という大事件がもたらしたいい傾向の一つだといわれています.
しかし,その一方,話しあいは手間がかかって困るとか,オシャベリばかりが巾をきかすとかいったカゲグチもきかれ「雄弁は銀,沈黙は金」「巧言令色すくなし仁」などと話し方を軽べつする昔の格言が引合に出されることも少なくありません.気の毒なのは学校の生徒たちで「オシャベリばかり達者になって,そのくせ字の方はさっぱり読み書きできぬ」とか,「屁理屈ばかりいっても実行はゼロ」などとサンザンにこきおろされています.
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.