講座
妊娠中毒症
小林 隆
1
,
田中 敏晴
1
,
我妻 堯
1
,
星合 久司
1
,
塚田 一郎
1
,
本間 恒夫
1
1東京大学産婦人科
pp.8-16
発行日 1962年3月1日
Published Date 1962/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202286
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1.はじめに
妊娠中毒症の本態は,現在でもいぜんとして不明である.しかしわれわれは日常実際に妊娠中毒症患者に遭遇し,診療しなければならない.いままでの治療法は,その原因の判らないままに高血圧患者には降圧剤,浮腫患者には利尿剤をというように,その症状を改善するだけのもので,根本的な原因をとりのぞく治療は行なわれていなかつた.現在でもまだその段階からでていないが,クロロサイアザイド系の優秀な利尿降圧剤が出現していらい,対症療法としての薬剤の進歩は目ざましく,妊娠中毒症も昔ほど,恐れられなくなつてきている.しかし,本態が不明である間は,本疾患に関する決定的な治療法は解明されたわけではないのであつて,われわれは,少しでもその本態を究明しつつ,一歩でもそれに近づいた治療法を行なうように努力しなければならない.そうすることによつて,当然従来より一層大きな治療効果も期待できるであろう.そこでわれわれは妊娠中毒症の本態に関連した2,3の事項および症例をあげて,われわれのこの問題に対する見解を述べ,ついでわれわれが新しく考案した,妊娠中毒症患者を産褥第7日目の症状で判定する4型分類を紹介し,本分類法がいかに簡便で,よく本態論を反映しており,かつ臨床的に実用性に富んでいるかを統計成績から説明し,さらに妊娠中毒症に対する現在までの,主としてわれわれの研究成果および治療方針を紹介して参考に供したいと思う.
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