講座
母子の健康管理はどうしたらよいか
渡辺 清綱
1
1目黒保健所
pp.34-36
発行日 1962年3月1日
Published Date 1962/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202291
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健康管理をどうしたらよいかを考えるまえに,まず母子の健康はどのように守られているか,実情をみてみたい.
妊産婦 日本の妊産婦の死亡率は,出生1万人対14.8(1960年)で,米国白人2.6(1957年)の5倍半である.30年前の1930年には,日本が出生1万人対27.4で,米国白人が60.9であつた.米国は,この30年で1/23に減少したのに,日本は1/2にしか減少していない.これは,一般の衛生状態にも関係が多いが,米国がとくに妊産婦の保健対策に力をそそいだ結果であり,この反面日本が,ほとんど妊産婦保健対策に力をいれてこなかつた結果でもある。また,妊婦の保健所における指導回数をみると,1960年に,年間延約43万人で,乳児の保健指導回数の延246万人にくらべて1/6にすぎない.施設分娩が,昭和22年2.4%であつたのが逐年増加し,30年には17.6%,34年41.7%と増加しているが,病産院で保健指導を行なつているところは,約23%で,他は検診だけで,特別な指導は行なわれていない.(昭和35年7月厚生省医務局調).妊娠婦に対する家庭訪問もほとんど行なわれていない.保健所でも,病産院でも来所するものだけの診療であり,聞かれたことに対してだけの指導で,母子手帳の交付以外に健康管理が行なわれている状態ではない.
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