読者のどくしょ
「無痛分娩」(菅井正朝,松葉弘共著)を読んで
E.
pp.44
発行日 1961年1月1日
Published Date 1961/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202061
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生殖が種族保存という人間本来の大きな使命である以上,分娩は女性ばかりでなく,人間全体にとつて非常に意義深くもあり尊ばれなければなりません.しかも,日進月歩の今日では医学は治療医学から予防医学の時代に入つているというのに,分娩についてはその昔に行われたと同様の方法が堅く保持されて現在に至つているのです.分娩が女性の当然果さなければならない生理的現象だとしたら,その自然性を生かして凡ゆる点で合理的に分娩を終了させるようないろいろな努力があつて当然なわけです.今日,そうした面から無痛分娩という新らしい考え方が研究され実現されつつある事は,全女性にとつてとても望ましいことではないでしようか.
当然の事ながら,分娩は自らすすんで母親となるための一過程です.その事を妊婦に自覚させる事が無痛分娩の出発点だと思います.「恐怖なきお産」を完了するためには,先ず産む人の努力が必要なのです.産む人が主体となつてこそ,医師,助産婦,家族等もまた一つのチームを形成して積極的に妊産婦を援けてゆくことが容易になる訳です.「無痛分娩」の著者は,この点を母となる人に対して強く訴えています.まるで「あなたにも責任の一端はあるのですよ」といわんばかりに.
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