カメラインタビュー
"助産婦と母と子と"(2)
pp.55
発行日 1961年1月1日
Published Date 1961/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202064
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カメラひつさげてとびこんだとたんに産声をあげたのがこの赤ちやん,午前11時8分というから比較的めずらしい真昼間の出産だつた.東京賛育会病院の分娩室.ほつと一息ついた若々しいお母さんは,清楚な助産婦の手に抱かれた吾子との初対面のよろこびを微笑でうけとめる.しずかだが,感動の数瞬である.無垢の笑顔が苦闘をつづけた母とそれを助けてきた助産婦への万金にまさる報いであつた.
赤ちやんは生下時体重3220g,陣痛発来時より13時間めの分娩終了.お母さんの田中恵美子さん(23)は病院に近い江東区に御主人の久夫さん(27)と水いらずの新婚生活をすごしてきた方でもちろん初産だが,非常に健康に恵まれて,既往歴もなく,予定日を3日すぎても別段不安も感じなかつたという.陣痛らしいものを感じたのが朝の6時ごろで,前駆的に足がつったり,軽い痛みを感じていた時だけに,待つてましたという訳で入院.「陣痛」というものに無経験なので従来のいわゆる「痛み」とどんな風に区別されるか気がかりだつたが,「これだけは何というんでしようか女の直感みたいなもので,これだと一度にわかりました」と,大役を果した悦こびに軽い興奮を抑えきれない面持で田中さんは述懐.
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