今月の言葉
将来の助産婦の在り方について想う
小林 隆
1
1東京大学
pp.5
発行日 1960年1月1日
Published Date 1960/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201823
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我が国の新しい助産婦制度は徐々ではあるが,確実に一歩一歩良い方向に前進していることは周知の通りで御同慶の至りである.1960年の新春と共に更に大きく前進することを皆様と共に祈念したいと思う.顧れば戦後総てがそうであつたように助産婦制度もその例にもれず,激変した事態に直面して戸迷い,嫌応なしにその在り方を外から指示されそれに従う他はなかつた.長い虚脱と低迷のあとに漸く方向が定まり自主的な発展を遂げつつあるのが現在の姿ではないだろうか.その意味では問題の所在とその解決は寧ろこれからであると言わねばならない.
ともかく昨年度までに母子保健センターへの動きと実際の創立,母性衛生学会の発足,新制度助産婦学校卒業者に対する大学卒初任給の確保等が実現したことは誠に喜ぶべき前進である.然し戦後の強い傾向である計画分娩によつて出産率が著しく低下したこと,殊に都会地では施設分娩への転換が80%以上に及んでいること等の事態に対し助産婦はどう対処すべきかという本質的な問題は日一日とその結論を迫られていると言えよう.助産婦が受胎調節指導者となるのも母性衛生を受持つことの一環としては合理的であり,いち早くそのような方策がとられたことは頷けることであるが,この程度では糊塗策に過ぎないことも明である.
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