人工衛星に憶う

　この雑誌が皆さん方のお手許に届く頃には，いくらか古い話題となるかも知れませんが，10日程前に打ち上げられたソ連の人工衛星程私達を驚かせたものは近頃ないでしよう．

　このように近頃の科学の進歩は目覚ましいものがあります．医学の面での発達は，皆さん御存知の通りです．所で，私が関係している産科の面で，私が大学を出てから今日迄の25年間にどれ丈の飛躍があつたでしようか？　なる程，保健衛生，予防医学の普及で子癇は少なくなり，輸血技術の進歩で弛緩出血による死亡はへり，抗生物質等の応用で産褥熱はなくなつて来ました．考えようによつて今昔の感にたえぬという人があるかも知れません，けれども人工衛生が地球を廻る迄になつた他の自然科学部門の発達を思うとき，産科の分野でのこの程度の進歩には何かあきたらないような気がするのです．