研究
夏期の産褥の手当
吉川 くら
pp.10-11
発行日 1957年9月1日
Published Date 1957/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201331
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何と云つても夏は苦手である.夏期に於ける産褥の手当は,先ず消夏法を考える室の位置,室内の整備等に気をくばり,通風をよく窓に日除をしたり風鈴をさげたり草花を置いたり,見た目だけでも凉しい環境を造り,安らかに睡眠がとれる様に蚊やはえの駆除等も出来得る限り手を届かせ日中は氷柱でも立て,うちわや扇風器の用意もする.産褥第一日只さえ疲れ易い.夏の日に今迄あまり臥床しつけない体を静かにして居る事も中々容易な事ではない.周囲の者達があまり出入せず静かに安眠出来得る様にし,汗をかかない為に水枕を用いるのも良いし,子宮底に氷を付け収縮をうながすのもよいと思う.悪露は汗と一緒になるのでなるべく当綿を少なく度々交換して防水に便利なビニール材料を用いる,簡単に敷物の交換が出来る方法も,感染予防も夏は殊に注意を要するので消毒を厳重に又股間や外腰の廻りは殊によく清拭してシツカロールをふる.第二日は日中は時に起き上り背中に風を入れる.臥床の交換及び衣類も汗になるので静かに交換してあげる.授乳時は汁が出るのでぬれ手拭を用意して置く.まだ此の時は乳汁の分泌も充分でないが乳線を刺激する意味で度々授乳する.第三日そろそろ乳線が発達し,其の為に発熱をしたり食欲不振になる事があるので乳房の手当をする.此の便通のない時は浣腸をする.第四日乳汁の分泌も順調によく出る頃になるので,授乳時間を正確に乳児のしつけをよくして母体の疲れない様にして行く.
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