原著
放射線手当の評価について—特殊環境手当の評価の試み
砂田 毅
1
,
木下 正弘
1
,
木下 商策
1
,
服部 恵子
1
,
加藤 智雄
1
1大阪府放射線中央研究所・衛生工学課
pp.706-712
発行日 1961年12月15日
Published Date 1961/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202475
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序
医療技術の進歩と相まつて,社会保障の一環としての医療保険の拡大につれ,放射線を取り扱う医師・医療技術者はその数と取り扱い件数が増加し,また原子力の開発とともに原子力産業従事者・研究者・サービス業者も急激に増加してきた。そのため放射線環境がいわゆる労働環境の大きな一部門を占めるようになつた。この傾向は今後ますます大きくなつていくであろう。
電離放射線がどんなに少量でも人間にとつて有害であるか否かの議論はさておき,あるlevel以上の量は有害であることは,科学的にすでに立証されてきた。放射線環境の下に働く職業人がそれ以外の人たちよりも,より多くの放射線の曝露を受けていることは確かな事実であり,さらにその上,大量被曝の危険も絶無ではない。この環境にある従事者に手当を支給して,これに報いているのが現状である。これを出発点にまで遡つて,果たして手当を支給することが妥当であるかどうかを論ずることは本文の主旨ではない。本来手当は労働需給の関係から,あるいは交渉によつて決まるのであるが,この場合は特殊作業であるという観点から,飽くまで放射線手当を支給して報いることが望ましいと考えられている現状を肯定することから出発する。この立場から放射線手当の支給額は,何を基準に算出すべきかに光を当ててみることにする。
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