今月の言葉
母性保護の問題
S
pp.9
発行日 1957年2月1日
Published Date 1957/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201201
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昭和17年7月妊産婦手帳の制度ができてから,今年で15年目である.この手帳はのち「母子手帳」と名を変えたが,とも角,戦時混乱時に若干の都市で交付を中止したのを除けば,戦前から今日にまで引つづき存在している母性衛生の具体的の支柱である,といえよう.
数日前乳児を背負つた母親があやまつて交通事故にたおれた.持つていた母子手帳から身許が判ったというような副産物(?)もあり,本来の目的以外にも,いくばくの効果がみられている.この手帳制は何をもたらしたか.医師の診察を強調するように内容を変化したため,助産婦にきらわれたり,結核検診をしなければ手帳を交付しないという条件をつけた保健所があらわれて医師の不評をかつたりした面もあつたが,とも角「妊娠中に受診する習慣」がこの手帳によつて育成されたという事実は否定できないであろう.これこそこの手帳制の最大の目標なのである.
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