受胎調節指導一年をかえりみて
家庭を通して
羽生 たき
pp.12-15
発行日 1957年4月1日
Published Date 1957/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201242
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時の流れは早いもので,ともすれば激流に押流されそうになりながら過去1年間を過して来た.その激しい流れの中に受胎調節の歩みは遂次世間の皆様に知られて来た事は嬉しい事だと思う.しかしまだ喜ぶというところまでは行つていない.大部分のお母さん達の考え方は子供は2人で結構だとか,4人あるからもういらないとか,子供を生んでしまつた後の受胎調節を考えている.それも結構だが,その方法もなかなか指導を受けようとしてくれない.人からきいたり雑誌を読んだりした知識で行つている人が多いのにかなしくなつてしまう.助産婦がその道の指導者である事を知つてもらう事が出来ないのかと思うと残念でたまらない.それらの方々は必ず2,3回は失敗して人工妊娠中絶をしている.
忘れもしない昨年の9月5日8人程のグループの呼かけをした時であつた.その全部の方に実地指導をした.そのうちの1人のお母さんが一番後で身の上話をきいてもらいたいと言われるので希望どおりに進めていつた.いよいよその人の番になると今日はなんでも打開けてきいてもらわれるのだというような表情になつて,3人の子供の母であること,人工妊娠中絶も3回したという事など今までの苦労を話してくれるのであつた.
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