特集 身の回わりの衛生
第II部 健康なくらし
家庭災害
平井 信義
1
1お茶の水大学
pp.57-60
発行日 1966年2月10日
Published Date 1966/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203566
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危険はどこにもある
新聞をひらいてみると,ほとんど毎日といってもよいくらいに,子どもの事故の記事がのっています.その多くが,家庭外での事故,すなわち,交通機関による事故と溺死であることは,死亡統計によってもはっきりしています.家庭外――つまり,親たちの目の届かないところで起きている不慮の事故は,その多くが社会の責任に帰せられると思います.無暴な運転をする人びと,歩道のない街路,危険な河,プールが少ないという条件――など,親たち一人一人の力では,子どもを守ることのできない問題がたくさんにあります.
ところが,子どもの事故の記事の中に,ぽつぽつと家庭内で起きた事故の報告があって,驚かされることがあるでしょう.風呂桶の中にはまっていたとか,冷蔵庫の中で凍死していたとか,うつ伏せのまま窒息していたとか,あるいは2階の窓から落ちたとか――ショッキングなできごとが報ぜられたのを記憶しておられるでしょう,そのような大げさな事件でなくとも,階段からころがり落ちたとか,針をふんで体内にはいってしまったとか,薬鑵をひっくり返したり,アイロンにふれたりして火傷を負ったとか,ボタンをのみ込んだとか――毎日のように家庭内で,親たちの心を乱すような事故が起きているのです.その数は正確にはつかまれていませんが,全国を調べてみたら,毎日毎日たいへんな数になることが予測されます.
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