短歌のまどい
短歌入門(12)
長沢 美津
pp.38-40
発行日 1957年3月1日
Published Date 1957/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201231
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Ⅰ.日本の風土と短歌
短歌が日本に長くつづいたことは風土や季節と関係が深い.風土というのは,土地の位置や地形等の自然の状態で,気候産物も含めての自然の環境を意味している.風土が住む人々の気質や性格に影響を与えることはさけがたい.日本の風土の特質は位置の上では海に囲まれた島国であり,地形の上からは土地の高低起伏が著しくて平原の少い特徴がある.つまり山が多くて周囲が海岸であつて山と水がつねに結びつく山水的である.風土外を美意識によつてとりあげると風景という言葉が生ずる.自然の調和の点から見て日本の海岸風景は1.太平洋の白砂青松式,2.瀬戸内海の内海式3.日本海海辺の断崖絶壁式があげられる.この東海道海岸が富士山を点景とするとき最も美しく,内海は小さい島々を配することによつて生動し,日本海はアルプス連峯を控えた時きびしい美しさが躍動する.永く和歌の温床となつた京都の風景も山紫水明という言葉が代表する如く山や川湖の関連のなかに成立している.
これら山水的である場合,狭い島国的地域で,しかも高低の著しいということは規模の小さいという性格を有するのである.このことは日本人の性格や気質にも影響して感動表現の文学形態にも反映してくる.
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