短歌のまどい
短歌入門(3)
長沢 美津
pp.49-52
発行日 1955年11月1日
Published Date 1955/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200950
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Ⅰ 抒情と写実(万葉第二期)
万葉が第二期にはいると素材の撰択にも表現のすすめ方にも明瞭な作者それぞれの風格のある作品が残されていて歌の大きな本質をなす抒情と写実の確立が見られる.
その各々の代表者をあげるならば,柿本人麿は格調の高い抒情歌人としてのおほらかなものをのこしている.人麿は舍人(とねり)という余り官位の高くない役目で持統文武の両朝に仕えたが当時の建設的な気運がほのぼのと描き出されている.その作品には生活感情の豊かな人間の真実さが限りなくほとばしり出て人々の胸から胸へとひびく.その歌調は歌聖として今も仰がれているのである.
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