短歌のまどい
短歌入門(11)
長沢 美津
pp.40-43
発行日 1957年2月1日
Published Date 1957/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201211
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Ⅰ.短歌の革新(写実派)
短歌の革新を写実の方面から称えたのは正岡子規である.明治32年に根岸短歌会を結んで新聞「日本」にその作品や所信を発表した.それは今迄短歌の上でとらわれがちである空想や観念をしりぞけて実物,実景,実情によることを根本とした.子規は病身であつたから肉体的の制約もうけたであろうが,新詩社の浪漫的な歌風に対し対蹠的に,歌の本質である抒情性を否定するのではなく沈潜させる方法をとつた.
照る月の位置かはりけむ鳥籠の屋根にうつりし影なくなりぬ 子規
いちはつの花咲き出でてわが眼には今年ばかりの春ゆかむとす 〃
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