短歌のまどい
短歌入門(8)
長沢 美津
pp.38-41
発行日 1956年6月1日
Published Date 1956/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201070
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Ⅰ.鎌倉室町の歌風
この期は前代からの諸種の傾向が形式内容ともに理想化されて歌論の対立となり,更に新鮮なものを求める力が強くなつて新古今の詠風が確立したときである.その後戦乱時代となるに従い特殊なものが派生した.
古今集以後勅撰集は世の移りと共に各々の撰者も時代によつて違つて来て在来のものをうけつぐ墨守派と,新風を加えようとする革新派が生じた,在来のものをうけつぐだけでは全然新味がなくなり斬新なものを追えば無定見となるという悩みが生じて新旧の争いともなるわけで,万葉が原典となり古今が典型となつて動かしがたい重さとなつて来たとき,古典を一歩も出ない保守派と溌刺とした新風を招こうとした革新派との二潮流の対立は避けがたいものであつた.拾遺集までは古今集をまもり,その後の詞花集までは両風の対立期でそれが千載集に至り綜合統一された.人としては古典派には藤原基俊一派があり新風をめざして源経信父子がある.そのあと藤原俊成が平安朝の歌を総決算したと見ることが出来る.
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