短歌のまどい
短歌入門(5)
長沢 美津
pp.64-67
発行日 1956年1月1日
Published Date 1956/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200991
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Ⅰ 言葉の発見
短歌が長い伝統を保ちながら今日まで続いているのを考えて見たい.第一は日本語の呼吸によく合つているということ,第二は短い詩形であるため広い階層に理解と支持を持つていること,第三にはどの時代にもすぐれた作者が出て柔軟に内容を変えていること,この三つが基盤となつていることが挙げられる.
いつの時代にも歌は言葉から成り立つものであつて,言葉の働きは相手に意味を伝えるのが目的で,その目的を果せば消え去つてゆくものであるが,ひとたび歌として使われると言葉が持つているいま一つの働きである「ひびき」が最大限に生きてリズムを持つた美しさを生み出し,ながくとどまり一首の歌となつて,意味が同じくても一言一句動かし難く違つた構成をするならばその美しさも価値もなくなつてしまうのである.それではどうしたらそのような言葉を選ぶことが出来るかということになると各自が発見してゆく他はないと云わねばならない.
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