科学の窓
エツクス線
pp.33
発行日 1957年2月1日
Published Date 1957/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201208
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肺結核の診断にはなくてはならぬX線が,ドイツの科学者ウイルヘルム・レントゲンによって発見されて,今年で61年になる.エツクス線を一名レントゲン線と呼ぶのは,発明者の名にちなんだものである.レントゲンは陰極線——真空にした管の両端にそれぞれ金属を入れておき,その両金属に電圧をかけると,電気のマイナスの方につないだ金属から他端に向つて流れる電子の線のこと——の実験中,その陰極線が出す光が邪魔になるので,真空管を黒い紙で覆つてしまい,更に電圧を高くした.すると,その真空管からは光が全く出てないのに,そばにおいてあつた螢光板が緑色の光を発しているのにレントゲンは気がついた.そこで,レントゲンはこれは何か真空管より,紙を通すものが出ているのではないかと考え,真空管と螢光板の間に木の板をおいて見た.今度は前より螢光板の光り方は弱くなつたが,やはり,螢光板は光つていた.その次に自分の手をそうして見た.ところが螢光板に自分の手の骨の形と思われる形の影が螢光板にできた.次にナイフを間においた.やはりナイフの影ができた.
このように,偶然にして,レントゲンは陰極線の真空管から,紙とか,木とかを通して,金属や,人間の骨を通さない眼に見えない線がでることを発見した.
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