講座
過熟児
矢内原 啓太郎
pp.24-29
発行日 1956年10月1日
Published Date 1956/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201136
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症例
H夫人(24才,初産)の月経は平素正順で30日型.最終月経は1952年5月25日から4日間正常にあり7月3日頃から軽度の悪阻症状で7月8日筆者の初診時には既に妊娠初期であつた.爾後順調に経過し11月初旬から胎動を自覚し11月7日には子宮底臍高,児心音を聴き翌年2月11日には子宮底劔尖直下,第1頭位,血圧120/60mmHg,尿蛋白(-),浮腫(-),妊娠10カ月初めに相当していた.分娩は実家の病院でする希望で2月中旬郷里に帰国.その後も何等異変はなかつたが分娩予定日の3月4日も過ぎ更に1カ月,4月中旬になつても陣痛が開始せず3回に渉る「キニイネ」内服も無効で4月18日ブヂー挿入後陣痛を見たが翌日除去後陣痛全く停止しその後異変なく経過し23日午後7時頃入浴直後5分間位脱力感がありその発作後それまで明瞭であつた児心音が消失し24日午前2時頃陣痛開始,同10時頃男児3200gを自然死産,外見上表皮の一部に剥脱のある外異変なく胎盤娩出後約1000ccの出血があつたと云うことであつた.妊娠中を通じて浮腫も尿蛋白もなく血圧も正常であり妊娠中毒症状は一度も認められてない.
本例は妊娠47週で突然胎児は死亡しその後約7時間を経て陣痛開始し分娩所用約8時間で巨大児でない過熟児を自然死産したものである.
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