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男女性の決定説(5)
小林 茂雄
pp.66-69
発行日 1956年4月1日
Published Date 1956/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201044
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栄養による分性説
男女性の分別は栄養の如何によつて定まるということを唱えるものがある.それは,遺伝や受精の状態から来る分性説を唱えた頃から学者の注意するところとなつた.マリー・トリート女史は,蝴蝶の試験において,幼虫の繭を結ぶ以前に,十分なる食物を与える時は,雌蝶が多く出て,之れに反する時は,雄蝶が沢山に出ることを証明した.ゼントリー氏も,各種の昆虫において試験したが,その結果はトリート女史の試験とほぼ同一であつたという.そこで,ゼントリー氏は次のように結論した.
1.幼虫の食物が,不十分であるか,若しくは有害質などを,含有せる等の場合は,雄虫多く生じ,雌虫は少いこと
2.秋季に至つて,草木の葉液に汁が欠乏する時に於ても,上と同一の結果となるが,夏季植物が繁茂して,滋養物が多くなると,雌虫が多く生じ,雄虫は減少すること.
3.総じて初生には,雌雄を区別し難く其の差異が多く晩期に至つて定まるのは,栄養の如何に関するのであることまた,ミーハン氏は,植物の上から研究して,かような説を唱えた.植物における雌雄の区別は,滋養の如何に依つて定まる.即ち滋養が多く,勢力旺盛なるときは,雌性が生じ,然らざる時は,雄性を生ずるので,植物に於ては栄養が性の決定に,至大の関係を有することが,明らかであると云つた.
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