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お産の傳説(1)
小林 茂雄
pp.52-55
発行日 1954年6月1日
Published Date 1954/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200630
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(イ)お産と加持祈祷
お産の際行われる加持祈祷は,必ずしも安産を祈るばかりでなく,安産をしても,室内の邪気を拂うとか子の幸幅を祈るとか,そういうことのために行うこともしばしばあつた.ここでは主として安産のためにお祈りをした例を揚げてみる.それはお産が重くて長びいたり,妊婦がひどく苦しむ時などに行うもので,歴史で名高いものは,治承2年中宮がお産の時であつた.この時は最も大仰にお祈りをした.「日本外史」卷の1,平氏の一条に
2年中宮妊む.淸盛身親ら嚴島の神に祈り,皇子を得んと冀う.教盛乃ち重盛に因つて赦令を下さんことを請う.成経康賴帰るを得.俊寛終に島中に死す.11月中宮産に臨んで難し.人或は謂う.成親俊寛の崇る所と,衆僧をして之れを穰わしむ.法皇乃ち爲めに経を誦す.卒に分身皇子を生む.淸盛喜極まつて哭し金綿を献じて之れを謝す.云々
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