講座
高年初産婦の臨床観察
明石 勝英
1
1札幌医科大学
pp.18-25
発行日 1955年3月1日
Published Date 1955/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200805
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緒言
分娩に際して兒の先進部に抵抗を与えるものは骨産道と軟産道です.そして骨産道が正常で,胎兒が正常発育の場合は,軟産道の抵抗と陣痛,腹圧の強弱が問題となります.軟産道としては子宮下部,腟管及会陰等の仲展管の伸展性が問題となつて来ます.軟産道と娩出力(陣痛と腹圧)とは相関関係に立つて居ます.軟産道の抵抗がよく或程度彊くても娩出力が強ければ,これに打勝つが,娩出力が初めから弱い場合或は初め強くとも抵抗が強いために疲労の結果減弱してくる場合も出て来ます.
軟産道抵抗の大小は各人によつて違うのは勿論のことですが,年令が特に大な因子となつて居ます.独逸の統計では満18才-25才を以て最も初産として適した軟産道の状態と考えられ,盤瀨教授は日本人ではこの年令よりも1.0-1.5年低いところにあると見て居ます.そしてこの年令よりも距たるに從つて軟産道の筋肉の萎縮,彈力纖維の減少,結合織の増加等のため,その伸展性が不良となり,特に30-35才以上となるとこの傾向か顯著となつて分娩障害を来す樣になります.その綜合的な結果として分娩所要時間の延長が見られます.
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