講座
新陳代謝
佐藤 德郞
pp.26-29
発行日 1954年9月1日
Published Date 1954/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200684
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新陳代謝の側面
1.まえがき 新陳代謝の問題は非常に複雑であるので,とても与えられた紙数で論じつくすことは出来ない.そこで問題を私共の生活に関係の深いものいくつかを拾いあげて解説してみたいと思う.
2.鐵と貧血 からだの中で一番鐵を多く含んでいるところは肝臓と赤血球である.赤血球の赤い色は鐵がないと赤くなれない.即ち鐵が欠乏するとひどい貧血をおこす.赤血球がつくられてから破壞するまで130日を要するとは同位原素や色々の実験で確定されたが,このことは私共の赤血球の約1%弱のものが毎日破壞されることを示しているのである.赤血球の中に含まれている鐵は,赤血球がこわれて再び利用されて新らしい赤血球の中に入り,こうして鐵の循環が行なわれている.その際多少のロスがあつて1日14mg位を補給すれば良いとされているが,身体の中で仂いている鐵は実は14mgどころではなく,それに数倍していることは理解して頂けるところと思う.ところで痔や胃潰瘍その他で出血している場合にはどうであろうか.身体で2度3度の役目を果さなければならぬ鐵が出血と共に失なわれてしまうことになる.微量の出血でも毎日続けば相当の量になる.普通の食事をしていたのでは鐵の補給が不足する.即ち鐵の欠乏が原因となつて貧血がおきる.このような例は私共がよく遭遇する例であつて,このような場合には鐵の補給が非常に効果がある.
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