特集 母の日のために
農村の嫁と食生活
田邊 繁子
pp.55-57
発行日 1954年5月1日
Published Date 1954/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200607
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農村の人が全体として栄養に実に無関心であつて,労仂を営々としてくりかえしながら粗食しかとつていないことは,全体として言えることである.しかし,その中でも嫁の食べものは全くひどいと言わなければならぬし.嫁のたべ方はかわいそうだと言えるほど,おちつかないものだといえる.女の人も姑と呼ばれるころになれば,何となく家庭の中でも権威が出来て来て,大して遠慮もしないのであるが,嫁といえば,はしの上げ下ろしまで家人全体から監視されているような家庭が非常に多いのである.
どこの地方に行つても「十年嫁奉公」をしなければならないというようなことを言い.又そういつた言葉がきつとある.…嫁奉公…これは実際相当きびしいものである.嫁は一番先に起きなければたらないし,嫁は一番あとまでおきていなければ嫁にあてがわれた仕事がかたづかない.嫁は白たびをはくなとか,こたつにあたるなとか,寒くても羽織を着るなとか,地方地方によつてちがうが,何か嫁をたのしく,気もちよくしない様な風習がしこりの様にあることが目につく.
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