くらしのわだい
現代の嫁と姑
俵 萠子
pp.64
発行日 1967年8月10日
Published Date 1967/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204008
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さいきん一気に読んだ小説は,有吉佐和子の"華岡青洲の妻"である。小説としてもいい出来だし,作者の意欲も感じられ,計算のゆきとどいた作品だと思った。しかし,なによりも面白かったのは,やはり題材である。麻酔薬の人体実験に嫁と姑が争って志願するという異常な題材のかげに,嫁と姑の対立というきわめて一般的なテーマが織り込まれている。舞台は古いし,話は異常だが,テーマそのものは少しも古くなく,また異常でもない。
今日,嫁と姑の争いは,あまり表面に出てこない。私はある新聞で身の上相談を担当しているが,この仕事をはじめて半年,まだ一度も嫁姑問題を扱ったことがない。夫の浮気がいちばん多く,ついで妻の浮気に関する投書が多い。妻の浮気がふえたというのは,新しい現象で,深く分析してみると面白いと思うがここでは主題からはずれるので省くことにする。
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