連載 口腔ケアを待つ人々・7
痴呆高齢者の入れ歯と「嫁」の思い
迫田 綾子
1,2
1日本赤十字広島看護大学看護部老人看護学
2口腔ケア研究会ひろしま
pp.872-875
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100578
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家から出られない嫁
玄関に車をつけるや否や,家から飛び出してきた英子さんは,「今日は娘が学校に行けなかったー」と,訪問看護師のNさんに娘の愚痴を一気に話しはじめました。訪問看護の利用者は姑さんのはずなのですが……。
次々とNさんに娘の状況を話した後で,英子さんは私のほうに向いて,「私はね,まだ1回も新幹線に乗ったことなんかないです。家から出られないんです」と言いました。50代の夫は,「女は家族に仕えるもの」として,亭主関白を通していました。買い物は,近所でさえも30分以内に決められているとか。だいたいのものは夫が仕事帰りに買って帰るか,日曜日に出かけて買っていました。
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