連載 身近かな栄養学・4
農村の食生活
小池 五郎
1
1女子栄養大学
pp.57-60
発行日 1968年11月10日
Published Date 1968/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204318
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健康に自信をもち,したがって健康の支えとなる食生活のあり方について,現在とくに問題があるとは感じていない人に対して,食生活の指導をするのは,たいへんむつかしい仕事です。いや,ほとんど不可能といってもいいかもしれません。指導をするためには,指導される人にまず問題意識をもたせなければなりません。そこでたとえば,美しくなるための食事法とか,若さを保もつための,スタミナをつけるための,頭がよくなるための,とかいうハタジルシを捧げて関心をひくようにつとめ,心がこちらを向いてきたところをみはからって,「健康食」のあり方を知らせるようにしたりします。これもたしかによい方法で,たんに「毎日の食事はこうあるようにつとめましょう」などといっているよりは,はるかに大きな効果をあげることができます。しかし,それよりもよい方法は,「私は健康である」と信じている人の健康状態を仔細に点検して,どこかに病的な個所をみつけることです。「あなたは少し血圧が高いようですね」とか,「尿に糖が出ていますよ」「少し貧血気味です」とかいえば,たとえ外観は平気を粧っているような人でも内心は大いにドキリとして,「これはタイヘンだ」と思うに違いありません。そして重ねて,「食事の内容は,こんなことに気をつけて,こんなようにするようにつとめて下さい」といえば,その指示が,その人にとって極端に非現実的なものでない限り,つとめてそれに従うようにするでしょう。
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