今月の言葉
死産率の引下げと助産婦
pp.5
発行日 1953年11月1日
Published Date 1953/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200471
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昨年1カ年におけるわが国の妊娠4カ月以上の死産数は203,687で出産1000に対する死産率は92.5となつている.これを昭和18年の39.9,昭和22年の44.2に比較すると2倍以上に増加している.かかる死産率の急増は何に原因するであろうか.この原因を求めるために死産を自然死産と人工妊娠中絶による死産とに分解してみると,事態ははつきりしてくる.すなわち自然死産率は,昭和24年は37.3に対して,27年は37.9となつてほとんど変化がない.これに対して,人工妊娠中絶による死産率は,昭和24年16.4に対し,27年は29.7と激増している.そのため全死産に対する人工中絶による死産の割合は,昭和24年の39.2%に対し,27年は53.7となつている.すなわち,死産率の上昇は自然死産の増加ではなくて,人工中絶の増加に原因することを知ることができる.したがつて死産率を引下げるためには,人工妊娠中絶を減少させねばならないわけである.以上あげた死産は,妊娠4カ月以上のものであるが,これを妊娠初期からの人工中絶をも含めると,さらに数は多くなつてくる.優生保護法にもとずいて行われた人工妊娠中絶数は,昭和24年の246.104に対し,27年はついに805.524と激増している.いろいろの理由はあるにせよ,ともかく,1カ年に80万以上の胎兒を失うといらことは深く考えねばならぬことである.この点からみても,人工中絶から避妊への切り変えがぜひ必要なことになる.
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